妊娠の報告を受けた後の人事異動 ― トラブルを防ぐために大切にしたい視点 ―

今回は、園長先生から実際にご相談いただくことのあるテーマ、
「人事異動の発表前後に妊娠の報告を受けた場合の対応」
について考えてみたいと思います。
※特定の事例が分からないよう内容は一部調整しています。


■ 人事決定後に妊娠の報告があった場合

ご相談のケースでは、次のような流れでした。

  • 人事異動の内容自体は、妊娠報告前に決定済み

  • その後、妊娠の報告があった

  • 異動発表後、通勤負担や体調面の不安から異動の見直しを求められた

園としては、

「妊娠を理由に決めた異動ではない」

という認識になります。

では、このような場合でもリスクはあるのでしょうか。


■ 「妊娠を契機とした不利益取扱い」と判断される可能性

男女雇用機会均等法では、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いは禁止されています。

ここで重要になるのが、
「理由として」だけでなく「契機として」行われたか
という視点です。

行政解釈では、時間的な近接性がある場合、
妊娠を契機とした措置と評価される可能性があります。

つまり、

✔ 決定は報告前でも
✔ 発表・命令が報告後

という流れの場合、形式的にはリスクが生じる可能性があります。


■ マタハラに該当しなくても生じる別のリスク

仮に不利益取扱いと判断されなかった場合でも、
配置転換自体の有効性が問題になる可能性があります。

いわゆる東亜ペイント事件の判断枠組みでは、配置転換は次の観点から判断されます。

  • 業務上の必要性があるか

  • 労働者に著しい不利益がないか

  • 権利濫用に当たらないか

妊娠中の職員にとって、

  • 通勤時間の増加

  • 体調への影響

  • 身体的負担

が大きい場合、園側には不利益を軽減する配慮が求められます。


■ 園として検討しておきたい配慮の例

状況に応じて、次のような対応が検討されます。

  • 勤務時間の調整

  • 業務内容の配慮

  • 通勤負担の軽減措置

  • 配置の再検討

  • 医師の指導事項の確認

重要なのは、
「異動か維持か」ではなく、安心して働き続けられる環境をどう整えるか
という視点です。


■ 実務上もっとも大切なこと:対話の機会を持つ

このようなケースでは、法的判断だけで結論を急ぐのではなく、

  • 本人の体調状況

  • 通勤や業務の負担

  • 不安に感じている点

  • 園として配慮できること

を丁寧に確認していくことが重要です。

いずれにしても、
「もう決まったことだから」と話し合いを行わないまま進めてしまうのは避けたいところです。

対話の場を持つことで、誤解や不安が解消され、お互いに納得感のある判断につながることも少なくありません。


■ まとめ|法的判断だけでなく「安心して働ける環境づくり」を

人事異動は園運営に必要な判断ですが、
妊娠・出産というライフイベントが重なる場合には、通常以上の配慮が求められます。

✔ 法的リスクの理解
✔ 不利益の軽減措置の検討
✔ 本人との丁寧な対話

これらを大切にすることで、トラブルの予防だけでなく、
職員が安心して働き続けられる環境づくりにもつながります。

判断に迷われた際は、どうぞお気軽にご相談ください。
園の状況に応じた整理と対応の視点を一緒に考えていきましょう。