「年度末で人手が足りない…」
「職員が一斉に休み希望を出してきた…」
保育園の運営が慌ただしくなる時期、こんな状況に直面する園長先生も多いのではないでしょうか。
「有給休暇は自由に取れるもの」──これは基本的な考え方です。
でも一方で、園の運営に大きな支障が出る場合には、日程を調整してもらうことが法律で認められているケースもあります。
それが、「時季変更権(じきへんこうけん)」という制度です。
時季変更権って何?
労働基準法第39条で定められている制度です。
有給取得によって「事業の正常な運営が著しく妨げられる場合」に限り、園が取得日を変更することができます。
ただし、「人手が足りないから」だけではNG。その日の体制で何が問題になるのか、きちんと説明できることが求められます。
行使するときのポイント
✔ 具体的な支障内容を明確にすること
「誰が休むと、どんな業務が回らなくなるのか」を整理しておきます。
✔ 他の職員との調整を行ったうえで
「代わりがいない」「振替が難しい」などの調整努力も必須です。
✔ 本人には丁寧に説明・記録
一方的な却下は避け、「なぜこの日では困るのか」をきちんと伝えましょう。説明記録も忘れずに。
保育園で実際に起こりがちなトラブル
❌「この時期は毎年繁忙期だからダメ」
→ 慣例だけでは理由にはなりません。
❌「この日は無理!」と一方的に却下
→ 不満や不信感を生み、職員のモチベーションに影響することも。
❌「全員の申請をとりあえず却下」
→ 正当な理由がないと行政指導の対象になりかねません。
保育園での対応フロー
申請された休暇日の内容と、その日の勤務体制を見直す
他の職員でカバーできるかどうか検討
難しい場合は、その理由を整理して丁寧に本人へ説明
調整や対応内容を記録として残し、園内でも情報共有する
保育園特有の事情と注意点
保育園には「配置基準」という法律上の人数要件があります。
そのため、一般企業よりも時季変更権を主張しやすい側面があるのも事実です。
しかし、それでも「きちんと説明できる状態にしておく」ことは絶対に必要です。
実際、「配置が足りなくなる可能性がある」という理由だけで一律にNGとすることは、トラブルの火種になることもあります。
時季変更権の行使が適法と認められるには、「具体的な支障」「調整努力」「説明記録」の3点が極めて重要です。
仮にこれらが曖昧なまま運用されれば、違法判断や損害賠償請求につながるリスクもあります。
まとめ|「園の事情」と「職員の権利」の相互理解を
職員にとっては、有給を断られることが「自分の権利が軽んじられた」と感じる出来事になるかもしれません。
だからこそ、「なぜお願いするのか」「どうしてもこの日は必要なのか」を丁寧に伝えることが大切です。
一方的な指示ではなく、対話と納得を大事にした運用が、
結果的に園の信頼と働きやすい職場づくりにつながるのではないでしょうか。


