退職時の年休はどう対応すべき?

年度末が近づくと、「3月末で退職する職員が年休を請求してきた場合、必ず認めなければならないのでしょうか?」といった相談が増えてきます。

退職時の年休は労働者の権利である一方、引継ぎや業務調整の問題もあるため、どのように対応すべきか悩むことも多いのではないでしょうか。今回は、よくある疑問に対して、適切な対応方法を解説します。


1. 退職時の年休請求にはどう対応すべきか?

原則として、年休は労働者が請求すれば取得できる権利であり、使用者の許可を待たずに成立すると解釈されています。そのため、基本的には認める必要があります。

しかし、業務の引継ぎなどの理由がある場合には、日数の調整を相談することは可能です。
例えば、以下のような方法が考えられます。

  • 退職日を延ばしてもらうよう依頼する
  • 引継ぎを円滑に進めるため、取得日を分散してもらう

職場の円滑な運営を考えつつ、職員の権利を尊重しながら柔軟に対応することが求められます。


2. 年休の買取は認めるべき?

基本的には年休の買取は避けたほうがよいでしょう。

確かに、退職時には例外的に年休の買取が認められることもあります。
しかし、これを認めることで次のようなリスクが生じます。

  • 「年休は買い取ってもらえるもの」という誤解が広がる
  • 計画的な年休取得が進まなくなる

そのため、可能な限り「年休は取得するもの」という原則を守ることが重要です。


3. 保育園では時季変更権を行使しやすい?

「配置基準がある保育園なら、時季変更権を主張しやすいのでは?」と思うかもしれません。
しかし、実際にはそう簡単には認められません。

例えば、「人員がギリギリだから」という理由だけでは、時季変更権を行使する根拠にはなりません。
ただし、以下のようなケースでは、一定の調整が求められることもあります。

  • 他の職員との調整がつかないほど年休取得が重なった場合
  • 退職時に長期間まとめて取得することで業務に大きな支障が出る場合
  • 退職者本人でなければ対応できない業務がある場合

こうしたケースでは、「退職日を延ばすよう説得する」などの対応を取ることで、一定の調整の余地を作ることも考えられます。


4. 退職時に年休をまとめて消化させないためには?

退職時に年休が一気に消化されると、職場の負担が増える原因になります。
これを防ぐには、日頃から計画的に取得させることが重要です。

具体的な対策として、次のような方法が有効です。

計画年休の導入(年間を通じて計画的に取得させる)
取得が進んでいない職員への積極的な取得促進
年休を取得しやすい職場環境の整備

「休める雰囲気」がある職場では、職員も自ら進んで年休を取得しやすくなるため、結果的に退職時の年休の大量消化を防ぐことにつながります。


まとめ

退職時の年休に関する対応は、法律の原則を守りつつ、職場の実情を踏まえた柔軟な運用が必要です。

年休の請求は原則として認めるが、引継ぎを理由に調整の相談は可能
年休の買取は慎重に対応し、基本的には避ける
時季変更権の行使は慎重に判断し、単なる人員不足では認められにくい
日頃から計画的な年休取得を促進し、退職時の混乱を防ぐ

年度末が近づくと、こうした問題が増えるため、スムーズな対応ができるように職場全体で仕組みを整えておくことが大切です。