職場における精神疾患の対応とステップ

以前のブログでは精神疾患対応の基本的な流れをご紹介しましたが、今回は実務面に焦点を当て、
より具体的な対応手順をご紹介します。

職場における精神疾患の対応とステップ

職場で精神疾患が疑われる場合、迅速かつ丁寧な対応が求められます。まずは「本人の健康を最優先に考える」ことが基本です。その上で、回復と職場復帰を支援するために、段階的で計画的な対応が必要です。以下に対応ステップをまとめました。


1. 診断書の内容確認と医師の指示の把握

診断書が提出された場合、まずは内容を確認し、医師の指示や療養に関する情報を把握します。診断書には休職の必要性や療養に関する指導が記載されていることが多く、これを基に「休職」という方向性を速やかに決定します。

本人の状況に十分配慮し、病気を疑うような言動や責める態度は避けましょう。また、本人が「無理をしなければ大丈夫」と話した場合でも、それを鵜吞みにせず、通常勤務をさせないことが重要です。


2. 休職期間の設定と職場体制の整備

本人が療養に専念できるよう、速やかに休職へと移行します。業務の引継ぎや一時的な体制の調整を行い、職場全体で支える体制を整備します。休職期間が長期化する場合は、定期的に状況報告を受け、必要に応じて傷病手当金の申請を支援します(健康保険加入者の場合)。


3. 復職準備のステップ

復職の申出があった場合、以下の手順で慎重に進めます。

  1. 診断書の再確認
    主治医作成の診断書を確認し、就労可能かどうかを判断します。
  2. 主治医との面談
    診断書を基に、本人の状況や業務に対する適応度、試し出勤の可能性を確認します。主治医との面談時には、事前に職場で観察した事項や希望する情報を「情報提供依頼書」としてまとめておくと効果的です。例えば、「業務負担の許容範囲」「残業の可否」「復職後の注意点」などを記載し、医師の意見を参考に職場対応を検討します。
  3. 産業医面談・試し出勤
    必要に応じて産業医の判断を仰ぎ、段階的な復職のための「試し出勤」を実施します。これは、復職前に本人の体調や就労可能性を慎重に見極めるための重要なプロセスです。
  4. 園による復職判定
    休職期間満了日より前に復職の最終判断を行います。医師の意見を参考にしながら、業務内容や働き方を調整します。
  5. 休職満了日までに復職できない場合
    復職の見通しが立たない場合、本人の意思確認と主治医の見解を踏まえ、休職期間の延長や配置転換を検討します。それでも復帰が難しい場合、合意退職や自然退職の手続きを進めます。

4. 職場のストレスチェックと相談窓口の設置

本人の支援に加えて、職場全体のストレスチェックを行い、他の職員の状況も把握します。職員が安心して相談できる窓口を設置することで、精神的なサポート体制を整えましょう。


5. 法的リスクへの備え

対応記録を詳細に残しておくことが重要です。診断書の受領日、本人との面談内容、主治医や産業医との連絡事項などを記録し、万が一のトラブルに備えます。また、就業規則に「診断書提出の義務」や「復職に必要な条件」を明記しておくことで、法的リスクを最小限に抑えることが可能です。


最後に

精神疾患に対する支援では、本人が安心して療養に専念できる環境づくりが最も大切です。焦らず計画的に対応を進めることで、本人の回復と職場復帰をスムーズに支援しましょう。