世代間コミュニケーションを円滑にするために
相手に「丸」をつけることの大切さ
今回は、保育園でよく耳にする「世代間コミュニケーション」の悩みについてお話ししたいと思います。特に主任の先生やベテラン職員の方々からは、若手とのコミュニケーションがうまくいかないという声をよくお聞きします。これは保育園だけでなく、どの職場でも共通する課題かもしれません。
このような悩みを何度も聞いてきましたし、私自身も経験したことがありますが、実はその解決策は意外とシンプルなんです。
それは、相手に「丸」をつけること。
この考え方が、世代間のコミュニケーションを改善する鍵になるのです。
●年齢差が生む価値観の違い
年齢が近い場合、価値観や考え方は比較的似通っていることが多いですが、年齢差が10歳以上になると、共有する価値観や「当たり前」の認識が大きく異なることがあります。これは、それぞれが異なる時代背景の中で育ち、異なる経験を積んできたからです。
例えば、今の若手はデジタルネイティブとして育ち、情報収集やコミュニケーションにインターネットやSNSを多用します。一方、ベテランの職員は、直接の対話やアナログな手法に慣れ親しんでいます。このように、時代の違いが価値観やコミュニケーションスタイルに影響を与え、誤解や摩擦を生みやすくなります。
●なぜ相手に「丸」をつけるのか?
問題が生じる原因の一つに、私たちが自分の価値観に固執し、相手を「間違っている」と感じてしまうことがあります。例えば、「若手は自分の考えを押し付けてくる」「ベテランは柔軟性がない」といった感じです。こうした考え方が、無意識のうちに相手に「バツ」をつけてしまっているのです。
自分(○) ⇔ 相手(✖)
しかし、ここで一度立ち止まってみましょう。相手にもその相手なりの正しさがあるのではないかと考えてみてください。つまり、相手の意見や行動にも「丸」をつけるということです。「相手が正しい」と認めることで、コミュニケーションの壁が少しずつ取り除かれ、互いの理解が深まるのです。
相手(○)
●自分にも「丸」をつけることの重要性
もちろん、相手に「丸」をつけるからといって、自分の意見を否定する必要はありません。自分にも「丸」をつけることが大切です。お互いが異なる価値観を持っているという認識が大事であり、それぞれが正しいと思っていることを尊重し合うことが、真のコミュニケーションの始まりです。
自分(○) ⇔ 相手(○)
このアプローチを試すことで、意見が対立しても、より建設的な話し合いができるようになります。相手の価値観を尊重する「リスペクト」の姿勢が、世代間の溝を埋める最も有効な方法の一つです。
●私の顧問先保育園でも同じようなことがありました。
主任の先生が、若手の保育士とのコミュニケーションに悩んでおり、特に若手が自分のやり方を主張し、これまでのやり方をあまり尊重しないと感じていたのです。
そこで、主任の先生は「相手に丸をつける」という考え方を試してみることにしました。まずは、若手の保育士が持つ新しいアイデアを積極的に聞き、その価値を認める姿勢を示しました。そして、同時に自分の経験や考え方にも自信を持ち、その価値を伝えました。
結果として、若手保育士も主任の先生の経験やアドバイスに対する理解が深まり、お互いがリスペクトを持って意見交換できるようになりました。この変化は、保育園全体の雰囲気にも良い影響を与え、職員間の協力体制が強まりました。
●リスペクトと尊敬の違い
最後に、「リスペクト」という言葉の意味について少し触れておきたいと思います。
リスペクトとは、相手を尊敬するというよりも、尊重するという意味合いが強い言葉です。相手を自分より上に置くのではなく、対等な立場でその価値を認めるということです。この考え方は、世代間コミュニケーションを良好に保つ上で非常に重要です。
お互いに「丸」をつけ合い、尊重し合うことで、世代間のギャップを埋め、より強固なコミュニケーションを築いていきましょう。このシンプルな考え方が、保育園全体の連携を深め、さらに良い環境を作り出す一助になるはずです。